サミー・ネスティコと金管アンサンブル(その7)…まとめ〜金管アンサンブルでジャズのアレンジを書く際の注意点と課題

その1その2その3その4その5その6と、
サミー・ネスティコ作曲の4曲をアレンジしながら色々と考えてきました。

今回アレンジしたサミー・ネスティコの4曲。

それを踏まえながら、金管アンサンブルでジャズのアレンジを書く際に注意した方が良いと感じたことを以下にまとめていきます。

<注意点>

(1) キー

・キーはオーケストレーションしやすいように変更する。

コード楽器がなく、パート数に制限があるため、
その編成でサウンドする音域はビッグバンドに比べるとかなり狭く、
各パートに適宜休みを作る必要があることも考えると、
コードサウンドを組むバリエーションはかなり少ないので、
キーはオーケストレーションしやすいように設定した方が良い。

ジャズスタンダードは各曲ごとに「よく演奏されるキー」があり、
そのキーの方が演奏しやすいという面もあるものの、
アレンジされた部分がサウンドすることが第一。

ビッグバンドからの編曲である場合、
もともとのアレンジはビッグバンド編成でサウンドするようにキーも設定されているはずなので、
変更した方が良いことが多い。

(2) ベースライン

・ブレスを取れるように休みを作る。

スイングフィールの曲であれば、どうしてもTubaがずっとベースラインを演奏する形になるので、
コントラバスやエレキベースと異なりブレスを取るスペースが必要

4分音符でウォーキングが基本であっても、
「部分的にin 2のフィールの部分を作る。」
「アンティシペーションする部分を作る。」
など、工夫することでブレスのポイントを作る。

テンポの速い曲では、
リズムがブレイクしたセクションを作ると、
Tubaに長い休みが作れるだけでなく、
アレンジにも変化が出て効果的。

・ラインに適宜8分音符を入れる。

ドラムがない状態で4分音符の連続のベースラインでは単調になるので。

・(オーケストレーションが薄い場所では)メロディを和声的に補い、メロディとベースラインでコードが成立するようにする。

アドリブソロのバックグラウンドでは、
(最終的に演奏者に任せるにしろ)ベースラインのサンプルは作っておいた方が良い。

(3) アドリブソロ

・アドリブソロのサンプルは作っておく。

アレンジのコントラストを作ろうとすると、
アドリブソロの部分はどうしてもオーケストレーションを薄くすることが多くなるので、
コード感が薄くなってしまうことを避けるために、
ベースラインやバッキングのフレーズとの兼ね合いも考えながら、
全体がサウンドするようにアドリブソロのサンプルを作っておく。

(4) アドリブソロのバックグラウンド

・必要最小限に留める。
コード感を出す、ソロ/ベースラインがブレスを取るスペースを埋める、など、
必要なところに必要最小限のフレーズを入れる。
ソロの前後はオーケストレーションが厚いことが多いので、
コントラストを作るためにソロのバックグラウンドは極力人数を少なくする。

(4) 曲の構成

ビッグバンドの曲の構成でよくある形を想定してアレンジする場合は、
テーマが1コーラス32小節で、
テーマ→ソロ1→アンサンブル→ソロ2→アンサンブル→テーマの各要素1コーラス(計6コーラス)だとすると、
BPM=176なら4分22秒、BPM=224なら3分26秒、BPM=116なら6分37秒。
テンポの遅いものは各要素を適宜短くする。

(ブラスアンサンブルの組曲だと1曲が短いと1分強のものもあります。
 そういう曲に馴染みがある方には、1曲が長いかも(?)。
 その場合は、各曲を
 テーマ→ソロ1・ソロ2→アンサンブル・テーマ(計3コーラス)
 など短い構成にして、
 組曲にしても良いのかも。)

…以上です。

そして、まだクリアできていない課題は以下の通りです。

<課題>

とにかく単調になることを避ける。

(1) サウンド

金管楽器のみの編成なので、サウンドに変化が少なく単調になりがち。
ミュートを使う箇所を増やせば良いか?
ミュートを使う箇所の音量バランスは?(マイクを使うことを前提としない方が良いか?)

(2) ベースライン

スイングフィールがずっと続くと、ベースラインの組み立て方のバリエーションが少ないので単調になりがち。
Tubaに休符をもっと作ることが出来ると良いが…。
Tuba以外のバッキングのフレーズとの噛み合わせを考えることで、更に効果的に休符を作れるかも?

(3) リズムアレンジ

スイングフィールがずっと続くと単調になりがち。
ブレイクやリズムのキメなど、少し多めにした方が良いか?
(今回はネスティコ作品のトランスクリプションのため試さなかったが)スイングフィールからアフロキューバンに切り替わるアレンジも効果があるかも。

(4) 選曲

実際に演奏するライブ/コンサート全体を通して考えれば、
スイングだけでなくラテンやファンクなどの曲を入れるなど、
曲調の異なる曲を並べることで、
単調な印象は少なくなるだろう。

次にアレンジする曲は、
「どんな曲があればライブ/コンサートを構成しやすくなるのか」
という観点で選ぶとよさそう。

…以上です。

ネスティコさんの4曲を試行錯誤しながらアレンジして見て、
予想していたよりは形になり、
自分でも演奏してみたいアレンジが完成したので、
1回ライブ/コンサートが出来るぐらいの曲数は書いていこうと思います。

次にアレンジする曲は、
ビッグバンドの定番曲のトランスクリプションが良いのか、
それともビッグバンドに囚われずジャズスタンダードを初めから金管アンサンブルで書くと良いのか…。
もしリクエストなどあればお知らせください。